【ゆうきまさみ×松浦だるまスペシャル対談】〔完全版〕その④

2014/10/14 00:00

イブニング本誌情報] [インタビュー・対談

【ゆうきまさみ×松浦だるまスペシャル対談】
〔完全版〕④


僕はまず、絵に惹かれましたね


ゆうきまさみ氏の最新作『白暮のクロニクル』。

ゆうきまさみ氏の最新作『白暮のクロニクル』。


松浦
確かに凄く緻密に描かれていますよね。調べる時間とかはどうやって作っているのですか?

ゆうき
いや、まるで調べているかのように描くっていうのは割と得意なんで(笑)。そもそも描き進めていくと、あらかじめ調べたことなんて役に立たないんですよ。調べたことを描くことはあんまりない。話の展開上、こうした方が面白いよねってなったら、もう取材に行っている時間なんてないですし(笑)。

——そんな行き当たりばったりで描かれているとは、全く思えない緻密さですね(笑)。ちなみに『累』もそういう意味ではかなり考えられて描かれてますよね。

松浦
考えてますね。考えてはいます。

ゆうき
基本的にはワンアイディアですよね。

松浦
そうなんですよ。だから1、2話で終了しているっていえば終了してるんですよ。

ゆうき
でもそこからちゃんとふくらませていって、しっかり面白くしてますよ。あぁなるほど、こういう問題起きるもんねってなって。両親の話とかも、これからどうするのって。

松浦
そこは本当に四苦八苦してます。こういうものがあればこうするし、あのキャラがこう動いたら、こっちはこうみたいな。それをちゃんと転がしてくのが本当に難しくて。だから『白暮のクロニクル』は本当に凄い作品だと思います。

ゆうき
いやー、行き当たりばったりですよ(笑)。

松浦
ゆうき先生恐ろしいですよ!

——『累』は松浦先生のデビュー作ですし、まだ荒削りのところもあると思いますが、ゆうき先生から見て『累』の魅力ってどんなところだと思いますか?

ゆうき
僕はまず、絵に惹かれましたね。もちろん個々人の感性ですが。僕は絵が好きですね。

松浦
ええ! めちゃくちゃ嬉しいです!

ゆうき
極端にリアルになり過ぎず、漫画的でありながら、でもちゃんとシリアスな物語が描ける絵ですね。案外難しいバランスですよ。

松浦
嬉しいです。自分もその方向を目指しているので。漫画的な絵の良さはなければいけないし、でも表情や仕草はリアルじゃなきゃいけないし。そのバランスを取るのが描いていて気を遣うところなので、そう仰っていただけたのが本当に嬉しいです。

——『累』はジャケットで買ってくれる読者の方も多いですよね。

松浦だるま氏のカラーイラストは見る者を惹き込む迫力がある。

松浦だるま氏のカラーイラストは見る者を惹き込む迫力がある。


松浦
表紙詐欺って言われます(笑)。開けると違うので。

ゆうき
ははは。でも(表紙の)こういう描き方はどこかで勉強されたのですか?

松浦
大学で油絵の勉強をしました。

ゆうき
ああ、なるほど。こういうの僕は描けないですよ。

松浦
単純に厚塗りをされる方が少ないから目立っただけですよ。その点は得してるかもしれません。

ゆうき
漫画だけ描いてきた人は、このやり方わからないですもん。厚塗りの仕方知らない。もちろん一部の方はいますが。やっぱり漫画ってのは線をとっていく作業ですから。こういう面を塗っていくやり方ってのは一苦労なんですよね。




朝、血圧が低い時なんかは「選べない!」ってなります



——確かに、そもそもカラーを描くこと自体少ないですもんね。

ゆうき
そうそう。僕なんかもうカラー原稿大嫌いで(笑)。カバーなんか『バーディー』の時も、毎回どうすればいいんだ!って(笑)。全然違う頭使わなきゃならないですし。自信がないから描きたくない。描かないからうまくならない。悪循環(笑)。

松浦
逆に自分は、緊張するのはモノクロの方かもしれないです。カラーはいろんな可能性を試した上で残っていく表情だったりするんですね。質感とかも。でも線画はとりあえず下描きでいろんな線を引いて、その中から一本を選ばなければならないじゃないですか。その緊張感って、カラーに比べるともの凄いんですよ。だから朝、血圧が低い時なんかは「選べない!」ってなります。集中力がなくて。どれを選んでも形は取れるのでしょうが、自分の中の一番いい一本を選ぶのは本当に緊張感があります……。

ゆうき
下描きってうまく見えますよね。線が多くて。あれって、見る人が自分の好きな線を勝手に選んで見てるからなんですよ。

——なるほど!

ゆうき
下描きにペンを入れてみますよね。その後消しゴムをかけて……、「失敗!」みたいなね(笑)。

——消しゴムをかけてみて初めてわかる。下描きは良かったのに(笑)。

松浦
確かに、消しゴムをかけてがっかりするのってもの凄くありますね。

ゆうき
大体の漫画家さんは経験あると思います(笑)。だから読者の方にあんまりラフの絵を見せない方がいいと思いますよ。サービスのつもりで見せたりするじゃないですか。(完成原稿と見比べて)がっかりされるから(笑)。

——最近はネットで作画風景を配信したりも多いですからね。

松浦
自分も描いたものをツイッター(@darumaym)に上げたりしますけど、自分は下描きを描いた後、筆でちゃんと描くようにしてます。途中のものを出すのはあんまり良くないと思って。ラフで出してラフが良かったりすると、それで満足しちゃう人もいると思うから。ツイッターで上げる時も、ラフを描いてそこから一本の線を選ぶのに「あー」とか「うー」とか言って悩むんですよ(笑)。

ゆうき
そう。一本の線を選ぶんですよね。

——確かにその一本の線から漫画は出来てますからね。ちなみに描くことについてですが、お2人は描くものに好みはありますか? 男女のどちらを描くのが好きとか。

ゆうき
女の人は服装を考えなきゃいけないので、描きやすいのは男ですね。女の人の服は自分で着ないですから。(女性用の)カタログ雑誌とか見るじゃないですか、でも後ろは映ってないから描けないよって。女の子なら幼稚園児でもお姫様のドレスのフリルを描けるけど、男はどんなベテランでも描けない(笑)。好きかどうかっていうのは大きいですね。

——じゃあ男を描くのは好きってことでしょうか?

ゆうき
好きっていうのとはちょっと違うかも。でも味のあるおじさんを描くのは面白いかな(笑)。好きっちゃ好きなのかもな。

松浦
私は女の子だけを描いていたいですね(笑)。

——わかります(笑)。

松浦
これがわかられちゃってるから駄目ですよね(笑)。勉強しなきゃいけないですね。本当にかっこいい男性が描けないんですよ。自分で描いてて気持ち悪いと思っちゃうんですよ。描いてから恥ずかしくて、よく一人反省会を開いてます(笑)。

ゆうき
でもまぁ、こういう漫画だから基本的に主人公に寄ってくる男にいい男はいないですよね(笑)。

松浦
基本的に悪い奴等しか出てこないですからね(笑)。

ゆうき
ちょっと昼ドラっぽいですよね(笑)。

松浦
ああ、言われますね。でも私、昼ドラ苦手なんです。怖くて見れないんですよ。女性のドロドロとか。

——いやいや描いてるじゃないですか(笑)。

松浦
自分だとわかってるから怖くないんですよ。

ゆうき
ありますよね。自分もホラー映画苦手なんですよ。先にメイキング見て、「こういう風に作ってるのか!」ってわかっても、本編は怖くて観られないです(笑)。

——ははは。わかってても駄目なんですね。

ゆうき
でもホラー描いてみたいなってのは思うんですよね(笑)。

松浦
ゆうき先生のホラー見たいです!

ゆうき
昔、描いてみたいなぁって周りに漏らしたことがあったら、「あんたみたいな可愛い絵で描かれたら台無しだ!」って言われて(笑)。

松浦
『白暮のクロニクル』読んだ後だと特に、ゆうき先生のホラーを読んでみたいなってなります。

ゆうき
もしかしたら今は、そういうものを描く準備をしているのかもしれないですね(笑)。

——『白暮のクロニクル』の中でそういう展開も出来るかもしれないですね。

ゆうき
いや、この作品でオカルトチックなものは出来ないんですよ。そういうのを出すと新たなルールが必要になるので。




恩返しは下の者にする


——『白暮のクロニクル』も『累』もルールがきっちりしてますよね。ちなみにゆうき先生は『累』で今後、こういう展開を見たいとかありますか?

ゆうき
本当にいい男を出してほしい! そんな男に(累が)どんな仕打ちをしてしまうのか。

松浦
凄い大変な課題ですね。立ち向かわなければ……。

——それは見てみたいですね!

ゆうき
烏合(※25)みたいなキャラは悪い人間ではないですけどね。でも、もっといい奴が出て来たらどうなるかっていう。

松浦
一応、先の展開で考えている話はあるんですけどね。まだ担当さんにも話してないのですが。そこでゆうき先生が仰られたような、本当にかっこいい男が出せたらなって思うんですが……。

ゆうき
僕が求めるのは性格のいい男。でもその時に気をつけなければいけないのは(五十嵐)幾(※26)の存在ですよね。この子は本当にいい子なので。この子に似ないようにしないといけない。

松浦
確かに。その通りですね! 頑張ります!




本当に最初にすべてがあったんですよ!


——なるほど。お2人のご意見を聞いて、ますます『累』の今後が楽しみになりました! それでは今後の活躍に向けて、それぞれに一言ずつエールをいただけますでしょうか。

ゆうき
僕はもう『累』を面白いと思ってるんで、ほとんど言うことないんですけどね(笑)。この調子でガンガンいって大メジャーになって欲しいですね。その後は若い人をおだてて、引っぱり上げる(笑)。恩返しは下の者にする。

松浦
そうですね。自分もそうなるように頑張ります。ゆうき先生にはファンとしての一言になってしまいますが、本当に『白暮のクロニクル』が面白くて。私は面白い漫画を読んだ時は本当に、砂漠で唯一の清水を飲んだ時のような満たされた気持ちになるんですが、『白暮のクロニクル』の特に③巻にそれを感じて。本当に読後感が気持ち良かったです。読者として本当に次が楽しみです!

ゆうき
ああ! プレッシャーが凄い!(笑)

——④巻は今年中に出ますもんね。『累』も10月に出ますし。

ゆうき
そうなんですよね。厳しい編集部なんで『でぃす×こみ』(※27)も今年中に出すって言ってますし(笑)。そういえば、関係ないですけど新人賞の受賞作と『累』ってテーマおんなじですよね。虚実とか美醜についてなんで。ギャグにしたらこうなったって感じで。後は、嘘ついちゃったけど後に引けない感じとか。本当に最初にすべてがあったんですよ!

松浦
そうなんですよ! 無意識に関心があったことなんですね、その時から。

——そういえばそうですね。全然気が付かなかった(笑)。最後に審査されたゆうき先生だからこそ気づかれた点もお聞き出来て良かったです。お2人とも本当にありがとうございました!


※25 烏合
『累』第②巻に登場したフリーの演出家・烏合零太のこと。累が初めて恋心を抱いた人物。

※26 幾
『累』第①巻に登場した累の高校の同級生。天真爛漫な性格と類稀なる美貌を持つ。累の醜い容姿を気にすることなく、累に優しく接していた。

※27 『でぃす×こみ』
ゆうきまさみ氏が「月刊スピリッツ」で連載中の作品。漫画家を目指す兄妹のコメディで、毎回、作中作が掲載される作りになっている。この冬に単行本①巻発売予定。

『累 —かさね—』④巻は10月23日(木)発売!

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