フランスの人気雑誌「KABOOM」で掲載された『銃夢』木城ゆきと氏インタビュー記事を特別公開!

2017/03/14 00:00

インタビュー・対談] [映画

海外でも絶大な人気を誇る『銃夢』シリーズ!

昨年よりハリウッド映画化が本格始動したこともあり、フランスの人気雑誌である「KABOOM」『銃夢』の特集が組まれました!

フランスの人気雑誌「KABOOM」の表紙を飾るガリィ!

フランスの人気雑誌「KABOOM」の表紙を飾るガリィ!


なんと表紙にガリィが登場し、特集記事では原作者・木城ゆきと氏のインタビューも!

この時のインタビューの日本語訳を「イブニング」2017年1号に掲載しましたが、今回、特別に「モアイ」でも公開!

木城ゆきと氏のルーツや『銃夢』誕生の秘密、シリーズの展望などなど『銃夢』ファン必読のインタビューをお届けします!


【『銃夢』木城ゆきと氏インタビュー】

(「イブニング」2017年1号に掲載)


見出しのL'ANGE EXTERMINATEURはフランス語でズバリ、“殺戮の天使”。

見出しのL'ANGE EXTERMINATEURはフランス語でズバリ、“殺戮の天使”。


いつから漫画家になることを意識し始めましたか?

子供の頃は映画監督になりたかったのですが、日本ではハリウッド級の映画を撮るのは無理だと悟りました。次いでプラモデル、とりわけガンプラに熱中しましたね。当時大流行していて自分も沢山お金を遣ったものです。

ある時、これで生きていくにはどうしたら良いか真剣に考えたのですが、ライターとしてプラモ誌で執筆をする程度しかないという結論に達しました。
その頃タイル工事の事業を起こした父には、自分が長男であることもあり、追い追い事業を継ぐと言って安心させていました。

高校生の中頃になり、先のいずれにも自分の将来を見出せず、最後に漫画が残りました。
それまで沢山絵を描いていたこともあり、ただの夢物語ではないと。そして卒業までに1000枚描くことに決め、それまで鉛筆画しか描いたことがなかったため、以後ペン入れまで終わらせることを目指しましたね。
また、それまでロボットやモンスターしか描いたことがなかったので、人を描くことを覚えねばなりませんでした。
漫画で仕事をするために最低限の力をつけようと計画を立てました。

1970年代に活躍した漫画家の影響も大きいと思います。松本零士さん(『宇宙海賊キャプテンハーロック』)、高橋留美子さん(『うる星やつら』)、原哲夫さん(『北斗の拳』)、大友克洋さん(『AKIRA』)などでしょうか。

そして高校在学中に漫画賞に入選することができましたが、親にはまだ言い出せずにいました。
高校卒業時にも、親には産業デザインを勉強したいとしか言えなかったのですが、進学した学校は一学期しか続かず、いよいよ親には本当のことを言わざるを得なくなりました。
親とは険悪になり、父には「お前には遺産はやらん」とまで言われました。
ただそれでも諦めようとは思いませんでしたね。


「KABOOM」に掲載された木城ゆきと氏のインタビューは、編集長ステファン・ボジャン氏が自ら来日されて2016年8月に敢行されたもの。

「KABOOM」に掲載された木城ゆきと氏のインタビューは、編集長ステファン・ボジャン氏が自ら来日されて2016年8月に敢行されたもの。


ガリィと作品の世界観はどのようにして生まれたのですか?

ガリィを生み出すまでには、編集者にネームのダメ出しをされながら何百枚も描いて数年を要しました。
最初の頃は全然良いものが描けなかったですね。サイボーグものを明るく軽いアクション作品を作るための口実としか見ていなかったからだと思います。
当初のストーリーと世界観は長編になるものではなかったため、もっと膨らませる必要がありました。

イェールやザレム、2つの社会階級が廃棄物を再利用するシステムのパイプラインによって繋がれている世界、といったアイデアは偶然思いついたものです。
当時23歳の自分はアナーキストを気取っていたと思います。
その後だいぶ変わりましたが、当時は社会に対する怒りを抱えていて、無意識に作品中に批判的な態度が現れていたと思います。

ガリィが世界を変え、この社会構造を崩壊させることになるとは意識してませんでした。
自分は政治的意識は高かったものの、政治的な作品を描くことは極力控えていました。このような作品を最後まで作りおおせるとは思っていなかったし、こんなに沢山描けるとも思っていなかったです。

告白すると、自分は決してサイボーグ研究には賛成しない。
ガリィを生み出した頃、すでに人体改造というアイデアは好きになれなかったんです。
それでも、当時すでに現実の科学の世界でも研究が進んでいたこともあり、政治パンフレットのような作品よりも、人類に役立つ科学を肯定的に捉える作品にすることにしました。
だが、改めて作品を読むと、自分も意識しないうちに政治的な文脈が入り込んでしまっていることは否定できないですね。


なぜ「終末系」を選んだのですか?

幼い頃は森に囲まれた郊外で育ったのですが、その風景もブルドーザーにより破壊されました。
実家の隣は突然広大な空き地になり、遊び仲間も去って行く。そうして隣近所のつきあいもなく、1人で蚊と遊んでいるような子供時代を過ごしました。

大人の世界で何が起きているかはよく分からなかったのですが、日々落ち着かない気分でいました。
年上の人々からある種の重苦しさ、または悲哀を感じ取っていたからです。
のちに歴史の授業で戦争が人々の心に重くのしかかっていたことを知り、世代間のギャップを意識するようになりました。
戦争を知らず近代化を受け入れる自分やさらに若い世代、そしてそれ以前の日本を知り、無理やり西洋化させられた国に対して保守的に振る舞い、憂鬱な表情を見せる年上の世代とのギャップです。
もしこの社会的ギャップが継続するなら、古い世代は権力を握り続け、若い世代はそれに対して無力だったのでしょう。
アニメと漫画の世界では、この状況は押井守のように一部のクリエーターに社会を悲観的に描かせたのだと思います。

そしてある日、子供の頃から自分を不安にしていた気持ちが理解できたんです。
この国の急速な工業化が大量の森を破壊し、大都市や鉄道路線の発展が自分を悲しませていたことを。我々の社会は破壊することでしか発展できないのではないかと感じていたのです。

この感覚は自分の作品に大きく影を落としていると思います。
初期の作品では、時には『マッドマックス』に似た雰囲気の終末ものを描いていました。
今でも大都市へ行くと時々、幼い頃に見た破壊の風景が思い出されます。

創造の前には必ず破壊があるもののように思われます。自分の作品で人類の基礎として「記憶」と「記憶の喪失」のモチーフが強調されるのは恐らくそういったことが理由ではないかと。


ガリィは人類を寓意化したものですか?

自分は作中人物に過酷な試練を与え、彼らは度々変異します。
ガリィはその脳や記憶であるところのプロセッサを失くしてしまうこともありますが、この時、彼女の人間性という問題がより強く提示されるのです。結局、金属や化繊でできたメカでしかないのですから。

でも、自分はこの問題には決して答えません。
彼女が記憶や魂を失くした時も、物質を超越した何者かに命を吹き込まれないとは断言できないからです。
苦しむ時にこそガリィのアイデンティティーは明確になると思います。


作品中、謎の理由で(答えを探し求めるように)ガリィを苦しませるディスティ・ノヴァ教授。私は長い間、彼をガリィの宿敵と考えてきましたが、彼はむしろあなた自身ではありませんか?

そう、ディスティ・ノヴァが業を研究しているのは偶然ではない。
だがガリィの宿敵というわけでもない、宿敵はまだ現れていないのですから。

当初、ディスティ・ノヴァは私流のフランケンシュタイン博士になるはずでした。
なぜかというと、この小説はあらゆるヘビーメタルSF作品が生まれる元になったからです。この作品にオマージュを捧げずに、この手の作品を描くわけにはいかないと思っていました。

ディスティ・ノヴァという名前は、ヘビーメタルの最初のグループと言われるBlue Oyster Cultの歌から来ています。
そして彼の特徴的な笑い方は、映画『アマデウス』(ミロス・フォアマン監督)でのモーツァルトの笑い方にヒントを得ています。

ただ、よくあるように、コンセプトの段階を過ぎると、どのキャラクターにも私の人格が反映されるようになります。
ガリィは私が持ちたいと思っていた私に欠けている資質を徐々に兼ね備えて来たし、ディスティ・ノヴァは逆に私の意志を映し出す存在となりました。

私にとっては理想的な科学者です。イドはむしろダンディーである一方、ノヴァは野心家。彼はガリィを徹底的に追い詰めます。

そして、彼女を助けることがあっても、それは彼がこのサイボーグが彼の業子力学研究にとって最高の検体だと考えているだけのことです。

『銃夢』第1シリーズでは、どのレベルの人間性で機械を動かすかが問題でした。ガリィは機械の体の中に人間の脳を持っていたので疑問が湧いたのです。
だが、第2シリーズでは、彼女の脳はプロセッサに取って代わられています。

最初は人間性の問題だったのですが、それはすぐにどうしたら幸福になれるかという問題に入れ替わりました。
なぜなら読者は彼女が抱える身体の充実と、常につきまとう憂鬱・怒りの対立に意識を向けざるを得ないからです。
彼女は身体の調子が良いほど心が傷つく。
身体的に人間ではなくなった者が幸せになれるのか、それが私が今の『銃夢火星戦記』で描こうとしていることです。


『銃夢』が一度終わり、そして再開した理由についても!

『銃夢』が一度終わり、そして再開した理由についても!


実際、1993年には宇宙または火星への出立に触れていますね。
今でも当時考えたようなラストで作品を終わりたいとお思いですか?

『銃夢』のストーリーは、最初の章を描く前から自分の頭の中では細かいところまでではないが、はっきりしていました。
というのは自分は常に、話が急展開するときに予定していない要素を盛り込める余地を残しておくからです。
ただ、キャラクターの動きや運命についてはもう固めてありました。

残念ながら個人的な問題により、⑨巻目で初めて制作を中断せざるを得なくなったのですが。作品を描き続けることができなくなってしまったのです。
そこで読者に納得してもらえるような結末を考えました。当時はこの作品を再開することは考えておらず、仕事に復帰したなら別の作品を描こうと思っていたのです。

集英社の編集者と話し合ったことで、第1シリーズとなるはずだったエピローグでガリィを復活させることにしました。ザレムを救い、ガリィとは終わりにしようと思っていたのですが。
数年後、個人的な問題が解決し、ガリィをまた描きたくなりました。こうして『銃夢 Last Order』に繋がっていったのです。

そうして当初のストーリー案と繋げるように試みたのですが、あまりに多くのアイデアが湧いて来たためストーリーを脇に押しやってしまいました。
今になってみると、この第2シリーズには決して満足していません。
『銃夢火星戦記』のストーリーは『Last Order』に組み込むつもりだったのですが、あまりに多くの急展開を詰め込んでしまったので、脇に置いて続編とすることにしました。

『Last Order』の完結には時間をかけましたが、今度は続編をやることが分かっていたので、次に上手く繋がるような結末にしました。
ラストは今のところ当初に考えたものになるはずです。
コンセプト、方向性の状態はまだ全て決めたわけではない。日々の制作の中でフレッシュさを保持する必要を感じています。
そして数年間にわたり制作するので、柔軟性を失いたくないと思います。


先生の画は自然に進化しているのですか、それとも意識的に研究した結果ですか?

両方です。もちろん、最初の頃の画を見るたび死にたくなる。
当時は筆運びが今よりずっとコントロールできておらず、ペン入れの線が太すぎました。
『Last Order』でずっと上達したと思います。線がより柔軟に、より繊細になりました。
でもまだ満足していませんでした。雑誌掲載時の大きな画面では上手くいっていたと思っていても、単行本の小さい画面になると質感や躍動感を失っている気がしていたからです。

『銃夢火星戦記』では、異なる道具を使っていて、厚みのあるものは筆、細いものを描くときはGペンを使っています。
結果は悪くないと思っていますし、時間の節約になっています。

コンピューターでの制作については、覚えるのにひどく時間がかかりました。
始めたのが1996年に『銃夢』のスピンオフを描いた時なので、かなり早い方だったと思います。
彩色作業に満足していなかったのでコンピューターを使うことには積極的でした。

原画に直接塗るのは嫌だったので、300dpi以下でスキャンしてプリントアウトしたものに彩色していました。ただ、プリントした線が多少ギザギザになってしまっていました。
それからしばらくして、線を滑らかにするためアンチエイリアシングを試しました。
結果は良好でした。
それからは出力した原稿にトーンを貼れるようになりました。
こうして、少しずつデジタル機器を覚えていったのです。面白いので、すっかり最新テクノロジーに夢中になっています。

そういうこともあって、『銃夢』ではテクノロジーの細部に立ち入らないようにしています。
知らぬ間にやり過ぎて読者に呆れられないようにしているんです。


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2ndシリーズ『銃夢 Last Order』NEW EDITION 全⑫巻 発売中!

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『銃夢火星戦記』試し読みはこちら!


『銃夢火星戦記』公式Twitter



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